【神奈川県東部地区】11.9 シェイクスピアプロジェクト 鑑賞報告
11月9日(土)深まる秋の夜長に、明治大学駿河台キャンパス、アカデミーホールにてシェイクスピアプロジェクト『ローマ英雄伝』夜の部を当地区父母会の一般会員の方々とご一緒に鑑賞してまいりました。
明治大学シェイクスピアプロジェクトは大学主催の公式行事で、学部も学年も異なる学生達が集結し、講師陣に指導を受けながらも演者はもちろん台本の翻訳、企画、演出から、衣裳、大道具、小道具、照明、音響、楽器演奏ひいては広告取りの資金運営に至るまで、学生主体でシェイクスピア劇を作りあげる一大プロジェクトです。
学生演劇としては日本最大級の規模であり、そのレベルの高さにも定評があります。
第16回を迎えた本年の演目は『ローマ英雄伝』と称し、『ジュリアス・シーザー』と『アントニーとクレオパトラ』のニ本立ての構成でした。
第一部『ジュリアス・シーザー』は、シェイクスピア劇場として名高いロンドンのグローブ座の鱗(こけら)落としとして上演されたと言われています。
表題のジュリアス・シーザーは実は主人公ではなく、かの有名な「ブルータス、お前もか」の言葉を残して第三幕で命を落とします。主人公はそのブルータスで、共和制から専制政治への移行を危惧してシーザーを暗殺したものの、後悔にさいなまれます。
見どころは、シーザーの腹心アントニーが、シーザー追悼の演説をする場面です。ブルータスを讃えつつ、シーザーがいかに市民に心を砕いていたかを強調することでブルータスに敵意を抱かせるように聴衆の心を操ります。ブルータスは自ら死を選び、幕が降ります。
第一部では音響効果が最小限に抑えられ、静寂に包まれる場面が多くありました。闘いや自害の場面も多く、迫真の演技に息を呑むような緊張感がみなぎりました。ローマ市民や兵士たち、ブルータスらが観客席の通路を歩む演出もあり、まるで物語の中に入り込んだかのように感じました。
第二部『アントニーとクレオパトラ』は、『ジュリアス・シーザー』で弁をふるったアントニーが主人公として登場します。
アントニーはローマの三頭政治の一翼を担いましたが、エジプトの女王クレオパトラとの愛に溺れ堕落してしまいます。
それが元で三頭政治を共に担うオクタヴィアヌス・シーザーとの仲に亀裂が生じ、対立は海戦に発展します。アントニーは敗北が決定的になる過程でクレオパトラとも行き違いが生じ、自害するに至ります。クレオパトラもアントニーの後を追い、命を断ちます。
第二部では一転、悲劇でありながらも随所に笑いの要素を散りばめた手法で、見やすい構成でした。
軽妙なやりとりの中、場面を重ねるごとに不穏な空気が忍び寄ります。
クレオパトラは傾城にふさわしく、奔放な立ち居振る舞いの中にも匂いたつような美しさでした。
本公演で特筆すべきは、女子学生が男性役を凛々しく演じたことでした。シェイクスピアの時代には女優は存在せず、男性が女装したものでしたが、それが現代にあっては逆に女性が男装をすることに何か可笑しみと誇らしさを感じました。
また、舞台で見せる若者たちの演技は苦悩や強い思いがにじみ出て、それがシェイクスピアでありローマ史劇であることを忘れさせるほど胸に迫りました。
シェイクスピアは数々の作品の中で、人生を芝居になぞらえています。これに倣えば、明治大学シェイクスピアプロジェクトの演者は舞台の上に限りません。
翻訳者は翻訳者の、衣裳作りは衣裳作りの、パンフレット制作者にはパンフレット制作者の、スタッフ全員がこの公演に至るまでの日々のドラマの中で、それぞれの役割を立派に演じあげた「演者」と言えると思います。そして、観客席に身を置いた私たちはさしずめ「魅了される観客」という最後の「演者」でしょうか。
観客席を後にした方々からは「ここまでとは!」というため息まじりの感嘆の声と「明大生の息子に是非見せたい」「学業があるのに素晴らしい」と絶賛する声が聞かれました。素晴らしい公演を届けてくださったプロジェクトのメンバーの皆さんに、もう一度惜しみない拍手を送りたいと思います。
来年の演目は『じゃじゃ馬ならし』です。本年お見逃しの方は、『じゃじゃ馬ならし』の観客という「演者」になってみてはいかがでしょうか。
****************************************************
明治大学神奈川県東部地区父母会
http://meiji-parents.jp/activity/area02/kanagwa_tobu/
http://www.facebook.com/kanagawa.east.meiji.parents
****************************************************
※神奈川東部地区は、神奈川県の下記の市及び郡です。
横浜市 川崎市 横須賀市 鎌倉市 逗子市 三浦市 三浦郡